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火星の月から砂を持ち帰れ JAXAの探査機MMXが公開、世界初のサンプルリターンへ

climate2026-08-17 · 1 min read · 2 reads

JAXAは8月13日、火星の衛星フォボスからサンプルを持ち帰る探査機MMXを種子島宇宙センターで公開した。10月から11月ごろにH3ロケットで打ち上げられ、火星の月からの世界初のサンプルリターンに挑む。

JAXAが、その歴史の中でも最も野心的な計画の一つに挑もうとしている。火星衛星探査計画、通称MMXは、火星の月からサンプルを持ち帰るという世界初の試みだ。8月13日、JAXAは完成した探査機を種子島宇宙センターの整備棟で報道陣に公開した。長い開発を経て、いよいよ本番に向けた最終段階に入ったことを示す節目である。

MMXの目的地は、火星をめぐる小さな月フォボスだ。直径わずか20から30キロメートルほどのこの天体に着陸し、その表面から砂を採取して地球へ持ち帰る。これまで火星の衛星から試料を回収した国は一つもなく、成功すれば文字どおりの世界初となる。小さく不規則な形をした月への着陸は、技術的にも極めて難しい挑戦だ。

打ち上げは2026年の10月から11月ごろが予定されている。使用されるのは日本の新型主力ロケット、H3の24L形態である。この時期が選ばれたのは、火星へ最も効率よく向かえる軌道の窓が開くためだ。この打ち上げ好機は数年に一度しか訪れないため、逃せば計画は大きく後ろにずれ込むことになる。

フォボスの起源という謎

MMXは火星の衛星フォボスに着陸し、その砂を地球へ持ち帰る計画だ。
MMXは火星の衛星フォボスに着陸し、その砂を地球へ持ち帰る計画だ。

MMXが挑むのは、単なる技術的な冒険にとどまらない。中心にあるのは、フォボスがどのように生まれたのかという長年の謎だ。フォボスは火星への巨大な衝突で飛び散った破片から形づくられたのか、それとも太陽系の外側から捕らえられた小天体なのか、いまだ決着がついていない。持ち帰った砂を分析することで、この火星の月の素性がついに明らかになるかもしれない。

さらに興味深いのは、フォボスの砂が火星そのものの物質を含んでいる可能性だ。フォボスは火星のすぐ近くを回っているため、その表面には隕石衝突で火星から飛ばされた破片が降り積もっていると考えられている。つまりフォボスの試料には、間接的に火星の欠片が混じっている可能性がある。これは火星本体からのサンプルリターンが実現していない現在、非常に大きな科学的価値を持つ。

成功すれば、火星の衛星から試料を持ち帰る世界初のミッションとなる。

5年に及ぶ往復の旅

MMXの旅は長く、綿密に計画されている。打ち上げ後、探査機はおよそ1年をかけて火星の近くに到達する。その後、約3年にわたって火星の周囲を回りながら観測と試料採取を行い、2031年度に地球へ帰還する予定だ。往復にかかる期間は合わせて約5年に及び、試料を収めたカプセルは最終的にオーストラリアに戻される計画となっている。

探査機そのものにも最新の工夫が詰め込まれている。打ち上げ時の質量は4480キログラムで、開発は三菱電機が担った。機体は往路、探査、復路の3つのモジュールで構成され、ミッションの各段階で切り離されていく仕組みだ。主エンジンにはIHIエアロスペースが手がけた450ニュートンのスラスタ4基が搭載されており、報道によれば総開発費は553億円規模とされる。

MMXは、日本が世界に誇るサンプルリターン技術の延長線上にある。JAXAは2010年に小惑星イトカワの砂を持ち帰った初代はやぶさ、そして2020年に小惑星リュウグウの試料を回収したはやぶさ2で、この分野を切り開いてきた。今回はその蓄積を、より遠く困難な火星圏へと広げる挑戦になる。積み重ねてきた経験が、前人未到の目標を現実のものにしようとしている。

JAXAはこの夏、他の分野でも動きを見せている。H3ロケット9号機は測位衛星みちびき7号機の打ち上げを予定しており、その時間帯は9月まで続く期間で調整が進められている。また、月の南極付近の水氷の分布を調べるLUPEXは、インド宇宙研究機関ISROとの共同計画として2026年度の打ち上げを目指している。日本の宇宙開発は、深宇宙から地球周回、そして月まで、同時にいくつもの舞台へと広がりを見せている。

こうした一連の流れの中心に位置するのがMMXである。もし計画が成功すれば、日本は火星の月から物質を持ち帰る世界で最初の国となる。そして、その小さな砂粒が、火星の衛星がどのように生まれたのか、ひいては初期太陽系の成り立ちにまで迫る大きな手がかりをもたらすかもしれない。前人未到の挑戦の成否は、まもなく始まる5年に及ぶ長い旅にかかっている。

中村 結衣
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中村 結衣
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