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九州大学と国立天文台、フィラメント間の低密度ガスが大質量星形成を促すことを発見:いっかくじゅう座R2で観測

climate2026-08-19 · 1 min read · 452 reads

九州大学と国立天文台の国際研究チームが、野辺山45m電波望遠鏡を用いて星形成領域「いっかくじゅう座R2」を観測し、これまで見落とされてきたフィラメント間の低密度ガスが大質量星の形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。ハブに供給される物質量は従来の想定より約50%多いという。

九州大学を中心とする国際研究チームと国立天文台は、星が生まれる仕組みに関する新たな発見を発表した。研究チームは国立天文台の野辺山45m電波望遠鏡を用いて、地球から約2700光年から2900光年離れた星形成領域「いっかくじゅう座R2」を観測し、これまで見落とされてきたフィラメント間の低密度ガスが、大質量星の形成において重要な役割を果たしていることを明らかにした。8月5日に共同で発表された成果だ。

観測の舞台となった「いっかくじゅう座R2」は、いわば星のゆりかごと呼べる領域である。研究チームは、一酸化炭素の同位体である13COとC18Oのデータを手がかりに、低密度のガスと高密度のガスの動きをそれぞれ追跡した。これにより、これまで捉えることが難しかった希薄なガスの流れまで含めて、星形成領域全体の物質の動きを詳細に描き出すことに成功している。

解析の結果、研究チームはこの領域に3本の高密度フィラメントと、それらの間に広がる3つのフィラメント間領域を特定した。フィラメントとは、ガスが糸状に集まった構造のことで、その中心にあたる「ハブ」と呼ばれる高密度領域に向かって、周囲からガスが流れ込む「ハブ・フィラメント構造」を形づくっている。今回はこのハブへ向かうガスの動きを精密に測定した点が大きな成果となった。

フィラメント間の低密度ガスの役割

最大の発見は、これまで注目されてこなかったフィラメントとフィラメントの間の低密度ガスの働きだ。研究によると、このフィラメント間の低密度ガスの少なくとも30パーセントが、周囲からフィラメントへと流れ込み、その後さらに中心のハブへと運ばれていることが実証された。従来は高密度のフィラメントばかりが注目されてきたため、この希薄なガスの寄与は見過ごされがちだった。

この低密度ガスの流れを考慮に入れると、星形成の描像は大きく変わる。研究チームの見積もりでは、ハブへ供給される物質の総量は、高密度のフィラメントだけを考えた場合と比べておよそ50パーセントも多いことが判明した。つまり、星の材料となるガスは、これまで想定されていたよりもはるかに広い範囲から集められていたことになる。

大質量星形成への影響

星が生まれる領域を象徴する星雲の姿。今回の観測対象は約2700光年先のいっかくじゅう座R2領域。(イメージ)
星が生まれる領域を象徴する星雲の姿。今回の観測対象は約2700光年先のいっかくじゅう座R2領域。(イメージ)

この継続的なガスの供給は、とりわけ大質量星の誕生に直結すると考えられる。観測では、ハブの内部にある高密度のコアが、より高い温度とより大きな質量を示していることも確認された。これは、周囲から絶え間なくガスが供給され続けることで、コアが成長し、重い星が形づくられていく過程を裏づける結果だといえる。

研究の意義は、大質量星がどのように生まれるのかを理解するうえで、高密度の構造だけを見ていては不十分であることを示した点にある。低密度のガスも含めた星形成領域全体の物質の総量、いわば「ガスの貯蔵庫」を丸ごと考慮することが、星の誕生の仕組みを正しく捉えるために欠かせないという新たな視点を提示している。

観測手法と研究体制

こうした精密な観測を可能にしたのが、国立天文台が誇る野辺山45m電波望遠鏡である。電波によって星間ガスの動きを捉えるこの望遠鏡と、13COやC18Oといった分子輝線を組み合わせることで、光では見通せない濃い塵の奥に隠れたガスの流れまで浮かび上がらせることができた。ハブ・フィラメント構造という視点が、観測データの解釈を支えている。

研究は九州大学を中心に、国際的な体制で進められた。九州大学のファン・ジヘ助教や町田正博教授らに加え、九州共立大学、名古屋大学、香川大学、そしてポルトガルのポルト大学の研究者らが参加している。成果は米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載された。

意義と展望

大質量星は、その一生を通じて周囲の環境に強い影響を及ぼし、重い元素をまき散らすなど、銀河の進化においても重要な役割を担っている。そのため、大質量星がどのように誕生するのかという問いは、天文学における長年の大きなテーマであり続けてきた。今回の発見は、その謎に迫るための新たな手がかりを提供するものだ。

今回の研究は、星形成領域を単なる高密度フィラメントの集合体としてではなく、周囲の希薄なガスまで含めた一つの連続した供給系として捉え直す必要があることを示している。ハブに集まる物質のかなりの部分がフィラメント間の低密度ガスに由来するという事実は、これまでの星形成モデルに一定の修正を迫る重要な知見だといえるだろう。

今後の課題は、いっかくじゅう座R2で見られたようなフィラメント間の低密度ガスの流れが、他の星形成領域にも共通して見られる普遍的な現象なのかどうかを確かめることになる。より多くの領域を同様の手法で観測していくことで、星が生まれる仕組みの全体像がさらに明らかになっていくと期待されている。

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